先日お会いしたのは60歳代後半の女性で、ご主人とは数年前に離婚したそうです。
体格もがっしりしていて、声も大きく、さっぱりしたタイプです。
「一人もんやから、働かなアカンねん。
こないだな、飲食店の仕事、パートやけどな、足を怪我して仕事辞めたとこやねん。
すぐに次の仕事探さな生きていかれへんわ」
熟年離婚で直面するのは経済的な問題です。
本人はいたって元気なのですが、60歳代という年齢を考えると、アルバイトでも採用されるのは難しいのでは・・・・と心配になりました。
「でもな、センセ、私な、面接では大概採用されるねん」
おやおや意外なことをおっしゃいます。
「電話かけて求人に応募したいて言うやろ。
そしたらな、相手は私のトシ聞いて、『体力的に無理だと思いますよ』て言うねん。
でな、私は『無理かどうか、一度会うてから判断してもらえませんか?』て言うんや。
そしたら大概面接してくれはるわ。
あとは私がヤル気を見せたら、すぐに採用になんねん、コレが」
確かに彼女は口先だけでなく、仕事の基本動作が身体にしっかり染み込んでいます。
周りを見てお客さんを見て行動するので、とてもに頼りになるのでしょう。
また働くことが大好きで、仕事に誇りを持ち、自分の引き受けたことに対してベストを尽くしているのがお話を聞いていて伝わってきます。
色々な職場で働いてきているので、経営者の態度や考え方に対してもシビアに観察しています。
「以前働いていたとこは、オーナーがめっちゃ商売人で、えらいこき使われてな。
でも、そのお店は活気があんねん。
オーナーが毎日夜遅くまで店内を隅から隅まで掃除すんねん。
私も働いてて気持ちよかったわ」
いしだもうんと若い頃、ファミリーレストランでバイトしたことがあります。
でもトレーを指三本で持つことが出来なくて、オーダーも上手に取れなくて(メニューを覚えていない)数日で辞めてしまいました。
それ以来飲食店の仕事はいしだにとってはアンタッチャブルでした。
しかしその飲食店の仕事を、こんなに楽しそうに語る人を目の前で見て、目からうろこが落ちたようでした。
採用の年齢制限もものともせずに「会ってから判断してくれ」なんて言ってのけるなんて、なんて大胆素敵なんでしょう。
彼女のように、世間の枠組みではなく「私は私です!」とはっきり言える人って少ないと思います。
でもこういう自立した女性が日本にもちゃんと存在していることが、とてもうれしく思えました。